意味がわかると怖い話 泣き止まない恋人

俺は今、彼女の家に来ていた。

今日は彼女の誕生日なのだ。

誕生日という特別な日だからなのか、彼女は普段よりもずっと大人びて見えた。

俺は男だから詳しく分からないが、もすかするとメイクを大人風に変えているのかもしれない。

だけど困った。

さっきから彼女はずっと泣いている。

俺は彼女を悲しませるようなことを、何かしてしまったのだろうか?

確かに、家に迎えに来るのに遅刻しそうだったから、急いではいたのだが、時間に遅れてはいないはずだ。

プレゼントだってちゃんと買ってある。

俺は彼女のために用意したプレゼントを、こっそり確認するために自分のバッグを覗いてみた。

あれ?

なぜだか、バッグの中の物はいろいろ壊れていて、せっかく用意したプレゼントもグチャグチャに潰れていた。

嘘だろ・・・?

なんだよ、これ?

いつこんなになったんだ?

意味が分からない・・・

そうか!

分かったぞ。

彼女は、俺がプレゼントをグチャグチャにしてしまったことに気が付いていて、それで泣いているんだ。

俺は彼女に謝った。

「ごめん、ごめんな。いつこんな風に壊れたのか分からないけど、新しい物買うからさ。今日という記念日にはもう間に合わないけど、俺、もっとたくさんバイトして、お前の好きな物用意するから。・・・ほら、そんなに泣くなよ。顔上げて笑ってくれよ。」

「・・・・しくしく・・・あなたが来てくれて、すごく嬉しいんだよ。こうやって会えることは、すごく嬉しい・・・でも、でもね。あなたはもう、違うところにいる人なんだよ。。。毎年、この日になると来てくれるのが、嬉しいけど・・・同時にとても悲しいの。」

どうしたっていうのだ?

彼女は泣き止んでくれない上に、ワケの分からないことを言っている。

女心は俺には分からない。

とにかく、俺は彼女が泣き止むまで黙って側にいることにした。

解説↓


もしかすると、「俺」はもうこの世にいないのかもしれない。

ストーリーを整理して考えてみると。

おそらく、何年か前の彼女の誕生日に「俺」は事故に遭って、この世を去ってしまったのだと思える。

それでも、「彼女の家に向かわなくては。誕生日をお祝いしなければ!」という死ぬ間際の強い思いが、魂をこの世に残留させてしまい、毎年彼女の誕生日になるとお祝いに来てくれるのではなかろうか。

そう考えると、(年月の経過から)彼女が妙に大人びていることも、(事故で壊れて)用意したプレゼントが壊れてしまっていることも、彼女の泣きながら言った言葉も、すべてが繋がるように思える。

でも、彼女は泣いているけれど、決して怖がっているようには思えない。

そして、言葉や考え方を見る限り、「俺」はとても彼女想いの彼氏だったように思える。

死んでも尚、恋人を大切に思える気持ちは素敵だ。

さらに、彼女側も死んでしまった彼氏(「俺」)の気持ちを最優先に考えているように思える。

二人はきっと、とても仲良しで良いカップルだったのかもしれない。

そう考えると、なんだか切なくて悲しい話だ。
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